だが、神々は二つの星座が決して近づかないようにした。 蠍座が...
だが、神々は二つの星座が決して近づかないようにした。
蠍座が昇るころ、オリオン座は沈む。
オリオンが夜空に現れるころには、蠍は地平の向こうへ姿を消す。
まるで、ふたりを引き裂くように。
それでも、アルテミスは夜ごと月を昇らせる。
彼女の視線はいつも、遠くの空にある狩人の星に向けられていた。
オリオン座が輝く夜、彼女の表情はほんの少しだけ優しくなる。
――その光の下では、彼が笑っている気がするから。
蠍が昇り、また沈む。季節は巡り続ける。
けれど、女神の心に残った想いは消えなかった。
夜空を見上げるたび、彼女は思う。
「次の夜も、ちゃんと照らすわ。あなたが迷わないように」
森を照らす月は、今日も静かに輝いていた。
次回もお楽しみに!